PauseBLOG 記者会見・コラム

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Jul 28, 2007

『ミディアム 霊能捜査官アリソン・デュボア』スタッフインタビュー

「7年間、犯罪捜査に協力したけど、事件の質は変わらないわ」(by アリソン・デュボワ)

Mdeam01 実在する女性霊能者、アリソン・デュボアをモデルにした、犯罪ミステリー『ミディアム 霊能捜査官アリソン・デュボア』。2005年に全米NBCネットワークで放送が開始され、高視聴率を記録した本作。日本では2006年にWOWOWで放送が始まり、以降人気番組となっている。全米では既に「シーズン4」放送が決定した。

この作品は、パトリシア・アークネット演じる霊能者(ミディアム)のアリソンの、特別な能力で犯罪捜査に協力しながらも三人の娘を持つ主婦である、という葛藤をも描いたリアリティ溢れるドラマだ。
「7年間、犯罪捜査に協力したけど、事件の質は変わらない。アメリカは殺人事件が多く、目を覆いたくなるような悲惨な事件も見てきました。これまで逮捕した犯人の中には史上希にみる残虐な殺人者もいたんです。でも、子供が性的な暴力を受けてそのまま殺されてしまう事件ほど悲惨なことはないわ」と神妙な面持ちで語るデュボア。日本での熱狂的な声援に応え、先日、遂に来日が実現した。

ドラマのオファーがあった時は既に犯罪捜査を手伝っていたという彼女に、“全てのエピソードがリアルなのか?”と聞いてみると……。「中には実体験に基づいたものもありますが、多くのエピソードは私の人生ではありません。基本はまず、架空の殺人事件があり、“私だったら、私たちの家族だったらどう対応していくのか?”ということからドラマを創り上げていきます」。

ほぼフィクションとはいえ、このドラマの魅力は、本名が使われていることからも判るように、彼女のリアルな生活や苦悩までもが描かれていることだ。『トゥルー・ロマンス』(1993)等で知られるアークエット扮するアリソンは、時に死者からメッセージに翻弄されたり、時に子育てや家族と仕事の両立に悩んだりする。
「パトリシアは才能があるし、何と言ってもいい母親。彼女が演じると知ってとても嬉しかったわ。彼女は撮影前に私の家まで来てくれたの。そして、役作りのためにリーディング(霊視)してくれないか、って言ったの。彼女、私がどういう表情で、どんな流れでリーディングするかをメモしていたわ。家族ぐるみでお付き合いしてるんだけど、私がどんな人間なのか、家族にどう接しているのか、素の私を理解した上で演じてくれているのが良かったと思う」。

その一方で、特殊な能力を持った彼女を支える家族の姿もリアルで、多くの人たちから共感を得ている。特に彼女を献身的に支えるジェイク・ウェバー演じる夫、ジョーの存在は、全米でも日本でも大人気だ。
「女性は皆、彼に夢中になるし、男性はジョーに同情してしまうようですよ(笑)」。

このドラマへの参加に対して、実際のジョーはどんな反応だったのだろう? 「ジョーが言ったことは“君を普通の女性だと思っていないよ”(笑)。彼は本当に私の能力に対して理解とサポートをしてくれています。今回の企画も、メディアによって普通の人が死の世界の存在を理解し、今の人生をより良いものにする機会を作り、犯罪に対する警鐘を鳴らすことが出来るかもしれないから、と賛成してくれました。それにこういう能力を持った子供たちへの理解を深められますからね」。

スピチュアル・サスペンスでありながら家族ドラマとしても楽しめるこの作品が、数多く見られるようになったアメリカ製TVドラマの中でも優れた1本であることは間違いない!

取材・文=勝丸 京子/Kyoko KATSUMARU(ライター)

プロフィール
アリソン・デュボア/Allison DUBOIS
1972年1月24日生まれ。アメリカ、アリゾナ州出身。6歳から死者の声が聞こえるようになり、彼らのビジョンを追体験するようになる。地方検察官志望し、アリゾナ州立大学在学中に検事局でインターンとして働き始めるが、やがてプロの霊能者、プロファイラーとして活躍する。2000年にテキサス州少女誘拐事件の遺体捜索に協力、2002年にはユタ州での誘拐事件で犯人像を通知する等、全米の失踪事件や殺人事件の捜査で尽力してきた。本作にはコンサルタントとして参加。リアルで共感を呼ぶ作品創りに貢献している。ドラマ同様、夫ジョーや三人の娘がいる主婦だが、捜査への協力、講演、著者の出版と、ドラマのヒロイン以上に忙しい日々を送っている。

Mdeam02『ミディアム 霊能捜査官アリソン・デュボア』
“MEDIUM”
PHE/TVシリーズ/2005年~/アメリカ/
カラー/1話約42分/
ヴィスタ/ドルビー(SRD:SR)
レンタル season1
vol.1~vol.3 8月3日スタート
vol.4~vol.7  8月24日スタート
セル season1
全16話(4枚組) 12,600円 9月21日発売
※season1 WOWOWにて放送中

2007 07 28 [記者会見レポート] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

Jul 25, 2007

ヴィスコンティ写真展+映画祭、いよいよ開幕!

  “―生誕100年記念―ヴィスコンティの遺香 篠山紀信・写真展&ルキーノ・ヴィスコンティ映画祭”が、いよいよ7月20日、東京・イタリア文化会館で開幕! 生誕100年に関連した大きなイベントは、東京ではこれが最後、一区切りになると思います。フライヤーの原稿等で僕も少しだけお手伝いさせて頂いたこのイベント。始めての方もファンの方もヴィスコンティの世界を堪能出来ることと思いますので、ぜひお出掛け下さい。僕も写真展と映画数本を観に行きたいと思っています。

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  ところで、篠山紀信・撮影の写真集「ヴィスコンティの遺香・愛蔵版」も、遂に7月19日に発売になりました。これは、1982年に発売されて“ファン必携の1冊”と言われた同書の増補改訂版。長らく絶版状態のままになっていましたが、今回、生誕100年記念ということで、「ヴィスコンティを求めて」の著者・柳澤一博も参加した増補改訂を経て復刊しました。これは、前の持っていてもいなくても、ファンなら欲しくなる1冊。勿論、僕も買います。

《―生誕100年記念―
 ヴィスコンティの遺香 篠山紀信・写真展&
 ルキーノ・ヴィスコンティ映画祭》情報

写真展:2007年7月20日~8月19日
    イタリア文化会館
映画祭:2007年7月24日~8月2日
    イタリア文化会館/B2F アニェッリホール
詳細はイタリア文化会館
http://www.iictokyo.esteri.it/IIC_Tokyo
   カンバセーションhttp://www.conversation.co.jp/

《書籍「ヴィスコンティの遺香:愛蔵版」》情報

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「ヴィスコンティの遺香:愛蔵版」
篠山紀信:撮影/小学館
2007年7月19日発売/価格9,450円

http://skygarden.shogakukan.co.jp/skygarden/owa/solrenew_detail?isbn=9784096801277&jcode=07060

《ヴィスコンティ生誕100年祭》情報
「ヴィスコンティ生誕100年祭」上映スケジュール
上映作品 『山猫 イタリア語・完全復元版』
     『ルートヴィヒ 完全復元版』
     『イノセント 完全復元&無修正版』
〈東京〉イタリア文化会館
    2007年7月24~30日
    
http://www.iictokyo.esteri.it/IIC_Tokyo
〈愛媛〉シネマルナティック湊町
    2007年8月4日~10日

http://www.geocities.jp/s_fukio/fukio/
ほか全国順次開催
配給:クレストインターナショナル
公式サイト 
www.crest-inter.co.jp/visconti/index.html

《書籍「ヴィスコンティを求めて」》情報
日経NET Web Magazine「日経WagaMaga」
柳澤一博インタビュー(全5回)はこちらからどうぞ!

http://waga.nikkei.co.jp/enjoy/movie.aspx?ichiran=True&i=20070529e2000e2&page=1

2007 07 25 [ヴィスコンティ映画祭] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

Jul 20, 2007

『石の微笑』キャストインタビュー

「人生にルールなんてない。人生は常に変化しているもの」
by ブノワ・マジメル

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互いに惹かれ合い、情熱的に愛し合うフィリップ(ブノワ・マジメル)とセンタ(ローラ・スメット)。しかし甘美だったはずのその愛は、不可解な行動と言動で次第に狂気の色を強めていくセンタによって、やがて衝撃の結末を迎える……。

ヌーヴェルヴァーグの巨匠、クロード・シャブロルが男女の愛欲と官能のサスペンスを描いた最新作『石の微笑』(6月30日~渋谷Q-AXシネマ〈レイト〉ほか全国〈地方は順次〉)。好調な動員を受けて7月21日(土)~27日(金)の追加上映が決まったこの作品について、主演のブノワ・マジメルはこう話す。

「シャブロル監督は“女性が世界を動かしている”という考えに基づいて創っているんだと思う。極端だけど、女性が全ての原動力となり男性は操作されているような、ね」。マジメル演じたフィリップは女に翻弄される男。女郎蜘蛛の糸に絡められた獲物のように、もがきながらもその狂気へと引き寄せられていく難しい役どころを美しく気高く演じている。

そんな彼に、センタが示す“人生の4つのルール”、“木を植える。詩を書く。同性と寝る。誰でもいいから殺す”について聞いてみると……。「“木を植える”はいいことだと思う。“詩を書く”も出来るし。むしろ書いたことがあるし(笑)。でも“同性と寝る”ことは難しいね。やり方を知らないし(笑)。それに“誰かを殺すこと”もチャンスに恵まれたことはないね。……よくよく考えてみれば、そんなこと言われたら、普通の男たちは逃げてしまうけど、僕の演じたフィリップは最後までセンタと一緒にいるからね。大した男だと思うよ(笑)」。

12歳で俳優デビューを果たし、今年で俳優生活21年目を迎えたマジメルに人生のルールというのはあるのだろうか?「ルールなんてない。人生は常に変化しているもの。ルールなんてものは人生に適応できないと思う」と言い切る。では人生の目標は……? 「それは自分で映画を製作することだね。役を待っているだけの俳優なんて全然興味ない。俳優は成功を収めてある程度の力を持つことができたら、企画を立てたり、才能溢れた人々を集めてクリエイティブなことをするべきだと思う。実は3、4前に『スズメバチ』(2001)の監督フローラン・エミリオ・シリとアルジェリア戦争をテーマにした映画を創ったんだ。フランスはあまり自分の国の歴史を映画化しないし、特にこの題材はタブー視されていたんだよ。もちろん、俳優として映画作家の要求に答えることは大切。でも、自分から刺激を与えてクリエイションに参加することが大切だと思う」。

今回のインタビューでの彼の言葉には、フランス映画界を担う映画人としての自信が満ち溢れていた。

取材・写真・文=勝丸 京子/Kyoko KATSUMARU(ライター)

プロフィール
ブノワ・マジメル/Benoit MAGIMEL
1974年5月11日生まれ。フランス、パリ出身。エチエンヌ・シャティリエの『人生は長く静かな河』(1988)のモモ役で注目を集める。アンドレ・テシネの『夜の子供たち』(1996)でセザール賞有望若手男優賞にノミネート。その後映画、舞台、TVと一気に活躍の場を拡げた。ディアーヌ・キュリスの『年下のひと』(1999)で共演したジュリエット・ビノシュと結ばれ、一児をもうけて話題を集めた。その他の主な出演作に、『シングル・ガール』(1995)、『王は踊る』(2000)等、多数。ミヒャエル・ハネケの『ピアニスト』(2001)ではカンヌ国際映画祭最優秀男優賞に輝いている。

Bunowa002 『石の微笑』
“LA DEMOISELLE D’HONNEUR”
CKエンタテインメント/クロード・シャブロル作品
2004年/フランス=ドイツ/カラー/107min./
ヴィスタ/ドルビー(DTS:SR)
6月30日~渋谷Q-AXシネマ〈レイト〉ほか全国〈地方は順次〉
※R-15 指定作品

2007 07 20 [記者会見レポート] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

Jul 19, 2007

フィルムセンターでロマンポルノを!

  ロマンポルノ、盛り上がってます。今度は東京国立近代美術館フィルムセンターでロマンポルノ作品が上映されます。作品は『実録阿部定』(1975・田中登)『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』(1978・小原宏裕)『ラブホテル』(1985・相米慎二)の3本。今回は、「日本映画の輝かしい歴史を築き、惜しまれながら逝去された映画人の方々を、それぞれの代表的作品を上映することで追悼する」という、フィルムセンターの不定期開催企画“特集・逝ける映画人を偲んで”の“2004―2006”にプログラムされての上映です。

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  今回の追悼期間は、2004年1月1日から2006年12月31日まで。その間、3作品でスタッフ&キャスト5人の方が亡くなられました。その上ふと見てみれば、1970年代中盤から80年代中盤まで作品にもかかわらず、監督は全て故人。ロマンポルノ、世界にも類を見ないこのプログラムピクチャーの証言を映画史に残して行くには、やはり時間が足りません。「愛の寓話」、頑張ろうよ……。
  今回上映される3作品は、どれも一度は観ておいて損のない、ロマンポルノの代表作です。中でも特にお薦めは『ラブホテル』。『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』と『実録阿部定』は最近の一般劇場での特集上映でも掛かりましたが、『ラブホテル』は劇場上映用プリントの劣化が激しく、現状では観る機会がありません。聞くところによると、配給元で“上映不可”の指定作品になっているようです。ということは、何かのきっかけでニュープリントが焼かれない限り観られないということなので、ぜひこの機会にご覧下さい。限りなく切なく、そして美しい、相米慎二の傑作です。個人的には、相米作品ではこれが一番好きです。
  今回の3作品、まだご覧になっていない方は、この機会にぜひ!

『実録阿部定』(C)日活
物故者 田中登(監督) 2006年10月4日没 69歳
    木村瑛二(録音) 2004年11月7日没 73歳
    江角英明(俳優) 2004年8月22日没 68歳
『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』(C)日活
物故者 小原宏裕(監督) 2004年2月20日 68歳
        木村瑛二
『ラブホテル』(C)日活
物故者 篠田昇(撮影) 2004年6月22日没 52歳

“特集・逝ける映画人を偲んで 2004―2006”
2007年7月27日(金)~9月26日(水)
東京国立近代美術館フィルムセンター 大ホール(定員310席)
※ この企画では全部で54作品が上映されます。ロマンポルノ作品
の上映日程、また他の上映作品等の詳細はHPで御確認下さい。

http://www.momat.go.jp/FC/fc.html

《ロマンポルノ特集上映情報》

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「性と愛のフーガ 田中登の世界」
2007年7月28日(土)~8月10日(金)
大阪・第七藝術劇場 全14作品上映
※東京/他では上映されなかったデビュー作『花弁のしずく』(1972)
  がニュープリントで上映されます。
※ 初日トークショーに出演する小沼勝の『ラブ・ハンター 熱い肌』
  (1972)が特別上映されます。
詳細は
http://www.nanagei.com/

《ロマンポルノ書籍情報》
貴重なインタビューと資料で構成された「愛の寓話」シリーズ。
購入は
http://www.cine-pause.com/book.htm

《ロマンポルノDVD情報》
ロマンポルノ作品のDVD。
購入は
http://www.geneon-ent.net/view_default.php

2007 07 19 [ロマンポルノ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

Jul 11, 2007

Vol.2 『ディア・ハンター』 映画史に残るラスト……その余韻は初公開時よりも重い。

  好漢ジェフ・ブリッジスが快男児クリント・イーストウッドをまんまと喰った銀行強奪物の快作『サンダーボルト』(1974)で映画ファンにその存在を強烈にアピールしたのがマイケル・チミノだった。センスの良い、語りの巧い監督さんという印象を持たせた。その監督が「ロバート・デ・ニーロ主演でベトナム戦争物を撮っている」というニュースが映画雑誌で紹介された時、映画ファンのほとんどが驚き、そして大いに期待した。『サンダーボルト』のようなシャープな戦争映画になっていることだろう……と想像しながら日本での公開を待った……シャープどころか鋭利な刃物のような作品になっていた!

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  日本では1978年夏に公開された最初の『スター・ウォーズ』(1977、ジョージ・ルーカス)、その熱がまだ冷めやらない1979年3月、『ディア・ハンター』(1978)は今はもうないシネラマの大劇場・テアトル東京でロードショーされた。封切りすぐにアカデミー賞で作品賞を始め5部門での受賞の報せが入り(当時は衛星放送による同時中継はあり得なかった)、約2ヶ月のロングラン上映という大ヒットに結びついた。その後、丸の内松竹系の小規模のチェーンに移り、そこでも約1ヶ月間のヒット上映となった。公開前は全くの無名だったクリストファー・ウォーケンとメリル・ストリープがこのヒットで日本でも一躍注目のスターとなった。映画雑誌のグラビアに毎号、二人の特写が載っていた程だ!
  日本での公開を1ヶ月後に控えた1979年2月21日、虎ノ門の森ビル内にあった配給元・ユナイト映画の試写室で観た。前半の延々と続く賑やかな結婚式の場面から一転して、静寂と共に〈死〉への畏敬が注がれた鹿撃ち、そしてまた一転してヘリコプターの大爆音と共に観る者を一気にベトナムの悪夢のような戦場へと引きずり込む凄まじい展開に圧倒された。銃口をコメカミに当てて引き金を引くロシアンルーレットの戦慄、デ・ニーロがアッという間に南ベトナムのゲリラ兵を葬り去る衝撃。フランシス・フォード・コッポラの『地獄の黙示録』(1979)が公開されるのは翌1980年の2月。映画ファンがスクリーンで初めて遭遇したベトナム戦争をリアルに伝える衝撃的なシーンは『ディア・ハンター』だった。
  鹿撃ちの山岳シーンと後半すぐのベトナムの戦場シーンの、印象派絵画を思わせる深みのある映像と意図的にドキュメンタリー映画のような粒子の荒さを持たせた映像の対比は今度のDVD版で観直しても強烈だ(撮影監督ビルモス・ジグモンドの手腕に乾杯!)。マスコミ試写が終わった時、同席されていた作家・池波正太郎氏の発した一言を思い出す。曰く「昔はウィリアム・ワイラー監督が『我等の生涯の最良の年』(1946)という映画を創ったけど、この『ディア・ハンター』はさしずめ〈我等の生涯の最悪の年〉とも言うべき映画ですね」
  ラストの葬儀の後の食事の場面は、長く映画の歴史に残る名場面だ。一人が口ずさんだ「ゴッド・ブレス・アメリカ」をテーブルを囲んだ皆が静かに唄い出す。『ディア・ハンター』は1975年5月に終結したベトナム戦争から僅か3年後に創られた映画。あの時代、皆がこの歌を戦場で亡くなった者たちに捧げた。それから20数年後、この歌はマンハッタン・グランドゼロの悲しみを癒す歌として再び多くの人たちに唄われることになる。あの歌に『ディア・ハンター』初公開当時よりも重たいものを今感じる。

Text by 田沼 雄一/Yuichi TANUMA(映画評論家)

2007 07 11 [Pick UP! DVD] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

Jul 09, 2007

写真展+映画祭、ヴィスコンティ回顧展が東京で開催!

昨年の10月7日に東京で始まり、その後全国で順次開催されてきたクレストインターナショナル配給の「ヴィスコンティ生誕100年祭」が、いよいよこの7月東京に戻って来ます。しかも今回は上映作品を5作品追加(『若者のすべて』『熊座の淡き星影』『地獄に堕ちた勇者ども』『ベニスに死す』)し、篠山紀信がかつて写真集「ヴィスコンティの遺香」のために撮り下した写真を見ることが出来る展覧会が同時開催されます。

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「ヴィスコンティの遺香」は、1982年に篠山がヴィスコンティ縁の地を撮影した写真集で、ファン必携の1冊。美しい上に資料的価値も高い、とても貴重な本にもかかわらず、長らく絶版状態のままになっていました。それが今回、生誕100年記念ということで、「ヴィスコンティを求めて」の著者・柳澤一博も参加した増補改訂による「愛蔵版」として復刊決定。同時に映画祭と併せた今回の大きなイベントが実現しました。
生誕100年に関連した大きなイベントは、東京ではこれが最後、一区切りになると思います。今回の上映作品は全てDVDで観ることが出来ますが、上映時間の長さ=集中力も考えればやっぱりスクリーンでじっくりと味わうのがベスト。この夏はぜひ、篠山紀信による「ヴィスコンティの遺香」と併せて、ヴィスコンティの世界を堪能して頂きたいと思います。

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《―生誕100年記念―ヴィスコンティの遺香 篠山紀信・写真展&ルキーノ・ヴィスコンティ映画祭》情報
写真展:
2007年7月20日~8月19日 イタリア文化会館
映画祭:
2007年7月24日~8月2日 イタリア文化会館/B2F アニェッリホール
詳細はイタリア文化会館
http://www.iictokyo.esteri.it/IIC_Tokyo  カンバセーション http://www.conversation.co.jp/

《書籍「ヴィスコンティの遺香:愛蔵版」》情報
「ヴィスコンティの遺香:愛蔵版」 篠山紀信:撮影/小学館 2007年7月18日発売予定/価格9,450円

《ヴィスコンティ生誕100年祭》情報
「ヴィスコンティ生誕100年祭」上映スケジュール
上映作品 『山猫 イタリア語・完全復元版』 『ルートヴィヒ 完全復元版』 『イノセント 完全復元&無修正版』
〈東京〉イタリア文化会館 2007年7月24~30日
http://www.iictokyo.esteri.it/IIC_Tokyo
〈愛媛〉シネマルナティック湊町 2007年8月4日~10日 http://www.geocities.jp/s_fukio/fukio/
ほか全国順次開催
配給:クレストインターナショナル
公式サイト 
www.crest-inter.co.jp/visconti/index.html

《書籍「ヴィスコンティを求めて」》情報
日経NET Web Magazine「日経WagaMaga」
柳澤一博インタビュー(全5回)はこちらからどうぞ!

http://waga.nikkei.co.jp/enjoy/movie.aspx?ichiran=True&i=20070529e2000e2&page=1

2007 07 09 [ヴィスコンティ映画祭] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

Vol.1 『REDS』 圧巻の3時間16分! この大作は時を超える名作だ!!

 素晴らしい画質とサラウンド音響によるDVD版で『レッズ』(1981)を観直し、監督・主演・共同脚本(トレヴァー・グリフィス)のウォーレン・ビーティのこの作品に注いだ情熱に改めて感動した。上映時間3時間16分。途中休憩の入った大作映画。準備から完成までおよそ5年の歳月を費やした。1910年代の、世界が混乱していた時代の荒れた空気を画面の隅々にまで表現したビーティの演出は今観ても手応え充分だ。画面の密度が濃いこういう大作映画はもう創られることはないかもしれない。

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 アメリカ人でロシアのクレムリンに埋葬されたジャーナリスト、ジョン・リードの激動の半生を描いている。リードは1917年のロシア革命を取材した名著「世界をゆるがした十日間」(岩波文庫刊)を著し、世界にロシア革命の実態を伝えた。
 『レッズ』は1981年のアカデミー賞で監督、撮影(ヴィットリオ・ストラーロ)、助演女優(モーリン・スティプルトン)賞を受賞した。同じ年に公開された『炎のランナー』(1981、ヒュー・ハドソン/作品、脚本、作曲、衣裳デザイン賞受賞)『黄昏』(1981、マーク・ライデル/主演男優、主演女優、脚色賞受賞)とかち合わなければ、ビーティは作品賞と主演男優賞、リードの妻ルイーズ・ブライアント役を演じたダイアン・キートンは主演女優賞を獲得していたかもしれない。日本では1982年4月に公開された。アカデミー賞受賞の翌月公開で話題は豊富、マスコミの評判も良かった。それでも当時は3時間を超す上映時間がネックになって興行側に嫌われた。一日の上映回数が少ない、客の回転が悪い、というのがその理由だった。中には休憩を挟まずに3時間16分ぶっ通しで上映した映画館もあった。当時宣伝をしていた人に「“せめて2時間以内にならないものか本国に問い合わせて欲しい”と興行側から要望が出された」と訊かされたことがある。
 勿論、どんなに時間が掛かろうとも納得するまで何度も撮り直すビーティが、日本の興行者の意見に耳を貸す訳がない。何しろ、ロシアの病室での静かな出来事を通路から据えっぱなしで撮った1分弱の、映画史上に残るあのラストシーンに「何と10日間も掛けたんだとさ」とパラマウント映画の元副社長で製作部門の最高責任者を務めたロバート・エバンズを呆れさせた程の〈完全主義者〉である。『レッズ』はエバンズがパラマウント映画に在籍していた1970年半ばに企画が持ち込まれ、一旦はエリア・カザン監督、ビーティとキャンディス・バーゲン主演で製作されることが決まったが、カザンの体調不良で製作中止となった。エバンズは相当悔しがったそうだ。
 その後、ビーティが独力で製作準備を進めたという訳だ。特典映像に収録されている彼へのインタビューで初めて知ったのだが、『レッズ』を監督するため、わざわざ監督修行と製作費捻出を兼ねてロマンチック・コメディ『天国から来たチャンピオン』(1978)を手掛けたのだそうだ。『レッズ』は監督2作目。しかし大ベテランのような風格と堂々とした演出で3時間16分を一気に見せる。特に第1部の終盤、休憩直前のシーン、有名な革命歌「インターナショナル」が流れる中、ロシアの労働者らと共に革命運動に参加するリードとブライアントを溢れる躍動感で描写したくだりが素晴らしい!
キートンの若々しさと凛々しさ。ビーティの溌剌とした豊かな表情。当時、ビーティは映画デビューから20年目、キートンは11年目だったが、まるで気鋭のスターのように新鮮に見える。あの頃の2人はリードとブライアントと同様、私生活でも仲睦まじかった!

Text by 田沼 雄一/Yuichi TANUMA(映画評論家)

2007 07 09 [Pick UP! DVD] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

Jul 03, 2007

エロチック乱歩~江戸川乱歩の世界、再び

田中登が遺した作品の中でも優れた作品として挙げられることの多い『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』(1976)。ここ最近のロマンポルノ特集上映でも上映され、スクリーンで観る機会に恵まれている作品なので、ご覧になった方もいらっしゃるかと思います。

『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』は、江戸川乱歩の「屋根裏の散歩者」と「人間椅子」の2作を再構成して創られています(このことについては書籍「愛の寓話 vol.1」をご覧下さい)が、今回はその原作小説を個々に映画化した作品が完成しました。
それが、“エロチック乱歩”という括りで連続公開が始まった『人間椅子』(監督:佐藤圭作/主演:宮路真緒)と『屋根裏の散歩者』(監督:三原光尋/主演:嘉門洋子)です。かつて田中登が描き出した、江戸川乱歩の持つ“猟奇”“耽美”“官能”“狂気”、そしてその先の“生と性と死”。今回の2作品は勿論、ロマンポルノではありませんが、注目のクリエイター二人が、江戸川乱歩、そして田中登の世界をどう現代的にアレンジしたかは一見の価値ありです。上映時間も“ロマンポルノ・サイズ”にまとめらていますので、ぜひご覧下さい。
そして、全国で順次開催中の“性と愛のフーガ 田中登の世界”の新しい情報が入りましたので、併せて掲載しておきます。該当地域にお住まいの方は、ぜひ足を運んでみて下さい。

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『江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者』
DVD ジェネオン エンタテインメント
   GNBD-1217 3,990円

“エロチック乱歩”
『人間椅子』『屋根裏の散歩者』
(c)2006 アートポート
シアターN渋谷(レイト)ほか全国にて順次公開
詳細は
http://www.artport.co.jp/movie/rampo/

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『人間椅子』

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『屋根裏の散歩者』

《ロマンポルノ特集上映情報》

「性と愛のフーガ 田中登の世界」
2007年7月7日(土)~13日(金)
大分シネマ5 全5作品上映(レイト)
詳細は
http://www.cinema5.gr.jp/

《ロマンポルノ書籍情報》
貴重なインタビューと資料で構成された「愛の寓話」シリーズ。
購入は
http://www.cine-pause.com/book.htm

《ロマンポルノDVD情報》
ロマンポルノ作品のDVD。
購入は
http://www.geneon-ent.net/view_default.php

2007 07 03 [ロマンポルノ] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック