« 『明るい瞳』スタッフインタビュー | トップページ | “ヴィスコンティ生誕100年祭”凱旋!! »
Sep 19, 2007
ロマンポルノ特集上映最新情報です
名古屋シネマテークでのロマンポルノ特集上映のスケジュール及びプログラムが正式発表になりましたのでお知らせ致します。
上映内容は、ラピュタ阿佐ヶ谷(2007年3月25日~4月21日)で開催された「性と愛のフーガ 田中登の世界」から選ばれた6作品です。どれも「田中登の代表作」と呼ぶに相応しい作品ばかりですので、お近くの方はぜひお出掛け下さい。
そしてお知らせ。「カイエ・デュ・シネマ WEB版」による内田達夫(「愛の寓話」シリーズ編者、本サイト編集長)インタビューのリンクと和訳も引き続き貼っておきます。ぜひご一読下さい。
《ロマンポルノ特集上映情報》
“特集・逝ける映画人を偲んで 2004―2006”
2007年7月27日(金)~9月26日(水)
東京国立近代美術館フィルムセンター 大ホール(定員310席)
※この企画ではロマンポルノ3作品(『実録阿部定』『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』『ラブホテル』)を含む全54作品が上映されます。ロマンポルノ作品の上映日程、また他の上映作品等の詳細はHPで御確認下さい。
http://www.momat.go.jp/FC/fc.html
“性と愛のフーガ 田中登の世界”
2007年9月29日(土)~10月5日(金)
名古屋シネマテーク
※ プログラム、タイムテーブル等、詳細はHPでご覧下さい。http://cineaste.jp/
《ロマンポルノ書籍情報》
貴重なインタビューと資料で構成された「愛の寓話」シリーズ。
購入はhttp://www.cine-pause.com/book.htm
《ロマンポルノDVD情報》
ロマンポルノ作品のDVD。
購入はhttp://www.geneon-ent.net/view_default.php
《内田達夫インタビュー》
“CAHIERS DU CINEMA”WEB版 トップ http://www.cahiersducinema.com/site.php3
※トップを開いたら右端の“mouvement(s)”をクリック。
※開いたら左端“ARTICLES PRECEDENTS”の中の“LE ROMAN PORNO DU SUTUDIO NIKKATSU Ⅰ”をクリックして下さい。インタビュー掲載画面がご覧頂けます。
※“ARTICLES PRECEDENTS”内の“Ⅱ”は「カイエ・デュ・シネマ」編集部が選んだ代表作紹介(あらすじ、映画評論家・北川れい子による解説)。“Ⅲ”は3月にラピュタ阿佐ヶ谷(性と愛のフーガ 田中登の世界)で、6月にシネマヴェーラ渋谷(官能の帝国 ロマンポルノ再入門)で開催された特集上映のレポート記事です。
[以下、内田達夫インタビューの和訳]
LA VERITABLE HISTOIRE D’UN DESIR HUMIDE?:LE ROMAN PORNO DU STUDIO NIKKATSU
(“濡れた欲情”の“実録”:日活ロマンポルノ)
インタビュー・文=スティーヴン・サラザン/Stephen Sarrazin (「カイエ・デュ・シネマ」東京特派員)
通訳・翻訳=佐野 美帆/Miho Sano (横浜日仏学院 文化部門アシスタント)
1971年に登場したロマンポルノ(ロマネスク・ポルノグラフィック)のおかげで、日活は映画の製作を続けることができた。一方、東宝や松竹、東映といった他の大手は、製作よりも配給へと活動の重心を移していく。
ロマンポルノ作品は、このジャンルが誕生してから数年の間に、大きな大衆的成功を収める。そしてその後、ビデオが肉体のテーマを、シナリオをより軽視して扱うようになるまでそれは続いた。17年間で1,000本以上の作品を生み出した後、日活はこのジャンルにピリオドを打つ。その間、主にロマンポルノの枠内でのみ活躍した真の映画作家たちが登場し、同時に、根岸吉太郎や相米慎二ら後にロマンポルノの枠外に飛び出して行く若き映画監督たちが長篇作品を撮った。ロマンポルノ、そしてその後は独立系ピンク映画が、この世代全体にとっての映画の学校であった。
しかしロマンポルノのもたらしたものは、学校としての役割や、官能性の範囲に限られるものではない(しかもその官能性とは、今日においては扇情的というよりもむしろ感動的なものであるといえる)。日活は日本のもう1つの顔を発見させてくれた。より直接的で、肉体的で、実体的な顔を。今日、ロマンポルノは重要な文化的レフェレンスとして見なされている。その作品はDVDになって発売され、巨匠たちを特集したレトロスペクティヴが毎年のように東京の映画館で開催され、ロマンポルノの歴史書や批評書が刊行されているのだ。そうした流れの中から、2006年末に東京学参から刊行が始まった「Interviews with a Romance Film Creators 愛の寓話」(1、2巻発売中)を監修された内田達夫氏に、今春、お話しを伺うことができた。
スティーヴン・サラザン:この度、日活ロマンポルノについてのシリーズ書を刊行することになったのはどうしてですか。
内田達夫:ロマンポルノについて、その歴史について、何かできないかと長い間機会を待っていました。また、作品を観る機会がより増えればいいとも思っていました。そんな折、ジェネオン エンタテインメント(DVDソフトメーカー)が150作品の予定で系統立てたDVD化を始めることになったので、チャンスだと思い、現在働いている出版社、東京学参に企画を出しました。企画はすぐには通りませんでしたが説得を続けました。というのも、今日、ロマンポルノに携わった監督や俳優たちが亡くなり始めていて、今どうしても彼らの証言や資料を集め、残して行かなければならないと思ったからです。
スティーヴン・サラザン:インタビューをした監督や俳優の選択はどのように行ったのですか。時代順であったり、テーマがあったりしたのでしょうか。
内田達夫:今回発売された,DVDで観ることのできる作品の監督や俳優から選んでいきました。観ることのできない作品について語るよりも、観ることのできる作品の方が先だと思ったからです。ですからDVDの発売順であるといえます。
スティーヴン・サラザン:このDVDソフトメーカーは、どんな基準で作品を選んでいるのでしょうか。
内田達夫:発売元であるジェネオンは、ロマンポルノをいくつかのジャンルに分け、その中の代表的な作品をまず選びました。コメディー、SM、海女もの、女優もの、等です。
スティーヴン・サラザン:日本映画の歴史において、日活ロマンポルノとは内田さんにとって何を意味しますか。
内田達夫:日活は、監督やスタッフ、俳優たちを育てていこうとした最後の大きな映画製作会社で、2週間に2~3本という定期的なペースで映画を撮っていました。当時、スタジオシステムを維持できなくなっていた日本映画界は深刻な情況にありましたが、日活は諦めませんでした。ロマンポルノのおかげで日活は生きながらえたのです。ロマンポルノというジャンル自体に関しては、まず性表現の問題で日本映画を解放しましたが、それは、17年間ずっとラブストーリーだけを撮り続けながら続きました。ロマンポルノの傑作は、ラブストーリーの傑作であり、多くの場合、感動的なストーリーです。そこでは1,133本もの作品が創られました。
スティーヴン・サラザン:この本のライターや評論家はどのように選んだのですか。このジャンルの専門家たちなのですか。
内田達夫:私の出版社では以前、女性向けの映画雑誌を刊行していました。そこに書いていた評論家、ライターたちは女性が中心でした。そうした流れから、彼女たちにロマンポルノについて書いてもらうのが面白そうだと思ったのです。その雑誌でロマンポルノを特集した号を出したことがありますが、とてもよく売れました。そんなことも、ほぼ同じ執筆者陣でこの本を編集したいと思った理由です。それに、今日ロマンポルノを観るのは男性ではなく、むしろ女性の方だからです。
スティーヴン・サラザン:どうしてですか?
内田達夫:日本では、数多くのロマンポルノ作品がDVDで観られるようになりました。その一方、かつてロマンポルノ衰退の一因となった、より純粋にポルノグラフィックな映像作品であるAV(アダルトビデオ)も氾濫しています。そうした中、男性はAVですが、女性はロマンポルノを選びます。それは物語があり、基本的に主人公が女性であり、彼女たちが強い存在だからです。物語や存在感を持ったヒロインたちについて、女性同士で語ることもあるでしょう。ロマンポルノの監督たちにインタビューをした際、何人かの方がこんなことを話していました。当時は男性のために創っていると思っていたけど、今になってみれば本当の観客は女性たちかもしれない、と。1971年にロマンポルノが誕生した時、AVはまだ存在しませんでした。恐らくほとんどの男性が性欲を満たすためにロマンポルノを観たことでしょう。でもAVが氾濫する今日では、ロマンポルノはそれほど扇情的には思えません。その映画としての質の高さや脚本の質の高さをこそ、私たちは評価し研究しているのです。
スティーヴン・サラザン:ロマンポルノは、日本以外の場所でも存在し得たでしょうか。あるいは日本でしか生まれ得なかったとお考えになりますか。
内田達夫:難しいでしょうね。ところでヨーロッパの観客は、どのようにロマンポルノを認識していらっしゃるのですか。
スティーヴン・サラザン:まず、大いなる無知ということが挙げられます。ロッテルダムやパリの日本文化会館で上映される、?代や小沼の何本かの作品を、努力して発見しようとする一部のシネフィルを除けば、何もないと思います。肉体をテーマに扱った分野では、70年代ヨーロッパではパゾリーニやファスビンダー、ベルトルッチ、マカヴェイエフがいました。そしてもちろん、大島の『愛のコリーダ』もです。でも、日活の映画監督たちはそこにはつながってはいませんでした。彼らはその時代を支配していた作家主義のモデルの枠外にいたのです。彼らの作品を、日本以外の観客へと導くためにこれからしなければならないことはたくさんありますが、それはとても情熱をかき立てられることです。
内田達夫:私はやはり、非常に日本的なジャンルといえるロマンポルノが生まれたのは、日本映画界の文化的背景、そして実際的な文脈が大きく影響していると考えます。大手では考えられない低予算、2週間という撮影日数、シネアストたちが頭を働かせなければならなかった検閲の問題……。それに、やってもいいことと見せてはいけないもの、言っていいことと触れてはいけないこと……。また、日活には2つ重要な対抗相手がいました。1つは常に圧力を掛けてくる警察、そしてもう1つは独立系ピンク映画です。ピンク映画界は日活のような大きな製作会社が自分たちの領域に入ってくることを良くは思わなかったのです。
スティーヴン・サラザン:日本には、ヨーロッパのシネフィルの思想から大きな影響を受けた映画評論家たちがいます。最近では明らかにその傾向は弱くなりましたが。彼らは一様にロマンポルノについてはほとんど語りませんでした。
内田達夫:確かに大まかにはそうです。80年代から90年代初頭にかけて活躍した世代は基本的に何も書きませんでした。ただ70年代前半から80年代初頭、誠実な評論家たちはロマンポルノに興味を持ち、語り、分析しました。ですから、今の世代の評論家たちにもロマンポルノを再発見してもらいたいのです。先程、ロッテルダムや?代や小沼作品についてお話しされましたが、映画評論家の蓮實重彦がそこで上映された作品について書いていました。しかし、今現在の国内の観客に向けて書くことも必要です。日活やロマンポルノが、時代を超える映画作家を生み出したことには疑いの余地がないのですから。例えば、昨年急逝された田中登もそうした1人です。第3巻では彼についてのページが多くなる予定です。彼と組んだスタッフや女優たちから証言や資料を頂き、まとめようと思います。
スティーヴン・サラザン:ロマンポルノ作品の中で、各ジャンルごとの傑作はどの作品だとお考えですか。
内田達夫:プログラムピクチャーですからジャンルで考えるべきかもしれませんが、むしろ優れた監督、好きな監督で考えてしまいます。?代辰巳や田中登、そしてロマンポルノで最も好きな監督、小沼勝。それに、脚本家として他の監督とコラボレートしつつ監督としてもデビューした石井隆です。
スティーヴン・サラザン:近年、日本の若い観客が日本映画に戻って来ています。彼らはロマンポルノのDVD発売や特集上映に興味を持つでしょうか。
内田達夫:この後、単館系の小さな映画館や国立フィルムセンターでの特集上映が予定されていますが、ロマンポルノがメインストリームになることはないのではないでしょうか。それでも、ベテランのある監督がこう言っていました。ロマンポルノは男性の性欲を癒すものとして創られたけど、世代を超えて作品は見直されていくだろう、と。作品の存在意義に対するその信念には感動を覚えます。その一方、「ポルノ」というネーミングについて、あるプロデューサーは後悔していました。この言葉によって観客の偏見を背負ってしまったことは否めないからです。しかしそれでも、ロマンポルノ作品は観客の好奇心を駆り立て、そしてもっと観たいという意思を抱かせてきました。それは今日まで続いています。このインタビューの前にお話されていたように、ポップカルチャーとしても少しずつですが確実に浸透してきました。
スティーヴン・サラザン:日本の70年代は黄金時代でした。ジャパニーズ・ヌーヴェル・ヴァーグに加え、日活や東映、そして若松孝二の作品がもう1つの自由を体現していました。
内田達夫:その通りですね。それを象徴する1つの例を、ロマンポルノ関連のことからお話しましょう。2001年に、渋谷の約1,200席を擁する大きな映画館(渋谷パンテオン:現在閉館)で、ロマンポルノのオールナイト特集上映が行われました。会場は満席になり、うち6割が女性だったそうです。そして『実録阿部定』上映後、観客は立ち上がって拍手をし、それは数分間続いたといいます。この上映会は今や伝説です。その時、70年代に創られたロマンポルノは新しい世代の観客に再発見され、その衝撃は時代を超えたのです。
トラックバック
この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/51417/16500148
この記事へのトラックバック一覧です: ロマンポルノ特集上映最新情報です:
