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Nov 29, 2007
Vol.3『ブレードランナー』 好みで言えば、手作り感があった初公開版、か。
『ブレードランナー』(1982)は1982年7月、夏休み映画として公開された。主演のハリソン・フォードは前年に全米で大ヒットした『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(1981、スティーブン・スピルバーグ)で名実共に大スターとなっていた。『レイダース』は日本では82年お正月映画として公開された。H・フォードは日本の冬と夏の映画興行を飾り、この82年頃から数年間、人気ナンバーワン男優となる。
『ブレードランナー』はハリソン・フォードの主演映画として大々的に宣伝された。『レイダース』の冒険男児インディ・ジョーンズとは対照的な私立探偵風のリック・デッカード。彼のナレーションで進行する物語はハンフリー・ボガート主演のハードボイルド探偵映画をホウフツさせ、映画マニアをニンマリさせた。数年後、製作プロダクションのラッド・カンパニーがルドガー・ハウアー演じるレプリカント、ロイ・バッティがレプリカント開発者、エルドン・タイレル(ジョセフ・ターケル)の目を潰す残酷シーンを追加したインターナショナル版を『ブレードランナー 完全版』(1982)と称してビデオリリース。そのあたりからSFオタクが騒ぎ出し、H・フォード映画からリドリー・スコット作品として認識が改められていくことになる。やがて、初公開から10年、1992年にデッカードのナレーションとエンディングの森のシーンを削除し、彼が夢の中で森を駆け抜けるユニコーンを見る場面を追加した『ディレクターズカット/ブレードランナー 最終版』(1992)が劇場公開された。
最終版と銘打たれたディレクターズカット版が最後かと思っていたら、何と監督のリドリー・スコット自らが最初のワークプリントを基に、「本当の最終版」として再編集した『ブレードランナー ファイナル・カット』(2007)が創られた。ワークプリントを含めると、5種類の版が存在する。ファイナル・カット版にはナレーションはなく、雨中のうどん屋のシーンが短くなり、ユニコーンの夢のシーンが1ショット追加され、エンディングの森のシーンは復元されていない。最新のデジタル技術で修正、カラー補正したためか、酸性雨が降り続き、暗く汚れた街という印象が強かった近未来都市が妙に明るく小綺麗な街になっている。ナレーションを削除したこともあり、私立探偵風のムードは見事になくなっている。
初公開版には手作り感があった。デッカードが乗るスピナーを吊るすワイヤーロープがはっきりと見え、お手製の視覚効果といった温かさを感じさせた。そのワイヤーロープをデジタルで消した。お手製感は失われ、ザラザラとした冷たい印象が残る。こういうお手製の視覚効果がデジタル技術によって抹消されることに、SFオタクらは何も感じないのだろうか。もっと騒いでもいいのに、と思う。ヒロイン、レイチェル役のショーン・ヤングの美貌は、初公開から25年経った今でもクラクラするほど。ジンジンにいい。デッカードがスピナーに彼女を乗せて森を走る初公開版がやはり好きだなぁ。
Text by 田沼 雄一/Yuichi TANUMA(映画評論家)
2007 11 29 [Pick UP! DVD] | 固定リンク
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