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Dec 20, 2007

vol.4『未知との遭遇』 ここに、スピルバーグが抱き続けてきた“夢”がある。

    スティーブン・スピルバーグの劇場用初のSF映画『未知との遭遇』は全米では1977年12月、日本では78年2月に公開された。日本ではこの時点で、77年5月に全米を興奮のるつぼに巻き込んだジョージ・ルーカスの『スター・ウォーズ』は公開されていなかった。日米同時公開が当たり前になりつつある現在では考えられない珍現象であった。

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    『未知との遭遇』はアリゾナ州のスコッツデイルという周囲を岩山と砂漠に囲まれた小さな町で育ったスピルバーグの、少年時代の思い出がたくさん詰まった傑作である。1977年の〈初公開版〉、80年に巨大な宇宙船の内部シーンを追加した〈特別篇〉、そしてスピルバーグ自らが特別篇編集時にカットされたいつかのシーンを元に戻し、同時にいつかのシーンを削除した〈ファイナル・カット版〉。その3種類を収めたDVD「製作30周年アニバーサリー・アルティメット・エディション」は、そのままスピルバーグの思い出箱と呼んでもいいぐらいの物だ。
    「We are not Alone 宇宙にいるのはわれわれだけではない」という公開時の宣伝コピーは、少年の頃、父アーノルドと出かけたキャンプの晩、夜空に輝く無数の星を眺めながら強く感じたスピルバーグの、その時の想いでもある。そのキャンプから数年後、スピルバーグは16歳の時、自主製作で16mmによる“FIRELIGHT”(1964)という上映時間2時間20分のSF映画を創ることになる。謎の光を追跡する科学者グループを描いたストーリーで、『未知との遭遇』でフランスの映画監督、フランソワ・トリフォーが演じたクロード・ラーコム博士ら科学者グループのエピソードの原形となっている。
    七色の強烈な光を放射しながら、夜空の彼方からこの地へ降りてくる巨大な宇宙船は、“FIRELIGHT”を製作した頃からスピルバーグがずっと心の片隅に持ち続けていた夢のカタチ。夜空に輝く無数の星を眺めながら、いつか必ず宇宙にいる“何か”と出会うことが出来るかもしれない、と強く思い始めたその気持ちを『未知との遭遇』の巨大宇宙船の存在に託して見せたのだ。『未知との遭遇』はスピルバーグが少年の頃から抱き続けている想いを大きなスクリーンに投影した“夢の映画”でもある。だからこそ、初公開版~特別篇~ファイナル・カット版とこだわってきた。
   リチャード・ドレイファス演じるロイ・ニアリーはコンピュータ・エンジニアだった父アーノルドをモデルにしている。宇宙船へと導かれる幼児のバリー・ガイラーは少年時代のスピルバーグ自身で、父親のいないガイラー家は両親が離婚したスピルバーグ家を思わせる。映画の終盤に人類の前に姿を現す宇宙人の容姿、頭が大きく体が細い体型は、幼少時のスピルバーグによく似ている。そして彼ら宇宙人は、やがて誕生する名作『E.T.』(1982)のあの愛らしい宇宙人の原形となっていくのだ。

Text by 田沼 雄一/Yuichi TANUMA(映画評論家)

2007 12 20 [Pick UP! DVD] | 固定リンク

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