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Apr 15, 2008
私、この作品にすっかり心を掻き乱されてしまいました。

皆さん、もうお花見はなさいましたか? 桜前線を追いかけると、南北に長い日本列島ではゴールデウィーク頃までソメイヨシノが楽しめますよね。春が訪れ、花々が咲き誇る様を眺めていると、「穏やかな幸せを絵に描いたよう」と思います。でも、その瞬間にも、“陰謀”が着々と企てられているとしたら……。今週、アメリカの対テロ戦争を題材にした『大いなる陰謀』を観て、そんなことを考えました。
遠い国の出来事だからよく知らないし、関わる必要もない。たとえ知ったとしても何か行動出来るわけではない。ささやかでも楽しい今の生活を守ること、それで精一杯だ。泥沼化するアフガン情勢について突きつけられた時、まずそんなふうに思うのが当然だと思います。でもだとしたら、今起きていることは一体何なのでしょうか。この『大いなる陰謀』は、約1時間半という短い時間ながら、時事問題、政治、マスメディア、戦場、教育現場、安穏な暮らし……といういくつもの視点から、たたみ掛けるような強烈さで「自問」することを私に促してきました。
『大いなる陰謀』
“LIONS FOR LAMBS” http://movies.foxjapan.com/ooinaru/
4月18日~日劇1ほか全国
“悪の枢軸を裁くのは我々正義の国”という旗印の下、世界情勢に介入して行く大国・アメリカ。でも、“9.11”同時多発テロを発端にした対テロ戦争は未だ終わる気配を見せません。“9.11”直後は一丸になっていたかに見えたアメリカ国民も、今や抱く思いは様々です。そうした状況を背景に、この作品では、同じ時代、同じ日、同じ時刻に起こる3つの物語が同時進行的に進んでいきます。
監督のロバート・レッドフォードは、自らも大学教授スティーブン・マレーを演じ、アフガニスタンに教え子を送り出した苦悩を語り、無関心を決め込む学生(アンドリュー・ガーフィールド)にその愚かさを説きます。トム・クルーズ演じる上院議員ジャスパー・アーヴィングは、更なる戦いに若者を駆り立て、その戦いを大統領候補になるための足掛かりにしようと画策し、メディアを利用することを考えます。そんなアーヴィングから独占インタビューの記者として指名されるのが、メリル・ストリープ演じる、かつて駆け出しのアーヴィングを評価した大物ジャーナリスト、ジャニーン・ロス。ロスはアーヴィングからアフガン極秘作戦をリークされ、どう報道するのか、またこれまで自分の関わってきたジャーナリズムとは何だったのかを省みることになります。そしてその頃、理想に駆られ出征した二人の学生(マイケル・ペーニャ、デレク・ルーク)は、兵士としてアフガンの戦場で絶望的な状況に立たされます……。
濃密なこの物語のどこに、皆さんの思いが反応するか判りません。私自身は、心を掻き乱され、内容や台詞を反芻せずにはいられないでいます。仕事柄、ロスに同調していくような気もしますが、まだまだ結論が見えてきません。
これは、複雑なテーマをハリウッドの大スター競演で見せた、緊迫感ある観応え充分の作品です。ぜひご覧になって、どう感じたかを身近な人と話しあってみて下さい。よろしかったら皆さんの感想も聞かせて下さいね。お待ちしています。
では、また次回です☆。
15/04/2008 中澤 有美子
セントフォースHP http://www.centforce.com/
中澤有美子ブログ http://ameblo.jp/nakazawa-yumiko/
「安住紳一郎の日曜天国」HP http://www.tbs.co.jp/radio/nichiten/
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コメント
cordon-jさん、いらっしゃいませ。丁寧なコメント、ありがとうございました。
『大いなる陰謀』はアメリカでも賛否両論、というか、どちらかといえば“否”の方が多かったようです。それは政治的な姿勢についてとロバート・レッドフォードの演出についてが主な争点でした。ですから「辛口の批評」というよりも、cordon-jさんのように受け止めて考えることが大事なのだと思います。確かにレッドフォードにしては中途半端さが残りますが、中澤さんが触れていた作劇の面白さや俳優の演技だけに着目しても一見の価値はあると思いました。
これからもよろしくお願いします。
投稿者: 編集部 (Apr 30, 2008 12:08:42 PM)
先週、この映画を観ましたのでコメントします。上映時間は1時間30分ちょっとで比較的短く、非常にメッセージ性の強い映画です。エンディングは観客に問い掛ける形で終わるので、観客としては製作者から言いたいことだけ畳み込まれて、余韻もなく消化不良の印象です。
原題の意味はこの映画のオフィシャルサイトで知りました。原題から映画のテーマを想像すると、過酷な現実に向き合うことを選択した若者(Lions)が、平和よりも正義を行使しようとする政治家や、風見鶏と揶揄されるジャーナリスト(Lambs)によって犠牲にならないためには、Lambsに利用されることに気付き、その現実を忌避する学生こそが、もっと社会参加すべきだということでしょうか。だとすれば、邦題はマスコミを利用しようとする政治家に焦点を置いており、命名に疑問が残ります。
映画全体の基調として、対話の中から銃後の政治,マスコミ,教育制度の不合理を浮き彫りにすることが狙いであり、戦場で若者が窮地に陥る場面は、こうした不合理をより鮮明にさせるためにあるようです。したがって、二人の戦士が最後に立ち上り、誇りを持って死んでいく場面は不可解です。むしろ、惨たらしい死の方が映画の趣旨に合っています。現在のアメリカでそうした演出は難しいのかもしれませんね。
また、幾つかの場面で少し白けた印象を持ちました。一つは、トム・クルーズとメリル・ストリープが丁々発矢の議論を戦わせる場面。この場面は両俳優の演技が光り、最も印象に残りましたが、Lambsの問題を露に会話に挟まれるとリアリティに欠け残念です。二つ目は、最初捕虜にしようとしていたはずなのに、最後は発砲して死なせる場面。どうしても誇りある死に方にさせたかったのではないかと、穿った見方をしてしまいます。これはLambs的演出といえないでしょうか。
とても辛口の批評でごめんなさい。個人的には、観客を癒し励ましてくれる映画が好きなのです。
PS:Lambは弱い動物と見られがちですが、ジョン・フランケンハイマーの「ホースメン」(1971)はその見方を変えてくれます。アフガニスタン地方の風習を題材にしています。
投稿者: cordon-j (Apr 29, 2008 10:56:59 PM)
