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Feb 01, 2012

人生と日常に新鮮な息吹を。

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 アートディレクターのオリヴァー(ユアン・マクレガー)は、仕事と飼い犬を心の友にする38歳の独身男性。恋にはちょっと臆病でいる。ある日、75歳の父が、44年連れ添った母がこの世を去ってまもなく、「私はゲイだ」とカミングアウト。厳格だった父が、それをきっかけに、若い恋人を作ってゲイライフを楽しみ始める。父役のクリストファー・プラマーは、今年のアカデミー賞最優秀助演男優賞候補になった。

 と、書くと、カミングアウトした父の新しい人生に右往左往する人々のドタバタ・コメディのようにも聞こえるが、実は、この『人生はビギナーズ』、そういうタイプの映画ではない。物語の現在時制では、父はすでに癌で他界している。晩年に真実を明かし、愛情を深め、最期を看取った父の存在を感じながら、ひとりの男が人生を振り返り、考えを巡らせる内省的なドラマなのである。

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 オリヴァーは考える。父と母の結婚生活は何だったのか。そこには、本当に愛情があったのだろうか。子供時代。仕事で忙しく、記憶にあまり残っていない父。孤独の中で、個性的に生きた母。ふたりの間に生まれた“僕”とは何か。恋人を作ることに諦めを感じていた頃、ひとりの女性と出会う。アナ(メラニー・ロラン)。ユニークで魅力的なフランス人女性――。

 物語の中心にあるのは、むしろ、この恋愛パートだ。少し変わったふたりのアンテナがぴたりと合い、急激に惹かれ合っていく恋の感覚に、観ているこちらもドキドキする。互いの距離が縮まるたび、ふたりは自身にとって本当に大切なものを発見していく。よく役者同士の化学反応と言うけれど、ユアン・マクレガーとメラニー・ロランのそれは、とても自然で親密。微笑ましく、絶妙だ。

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 映画は、過去と現在を、オリヴァーの心象風景を交えながら複雑に行き来する。どことなく、『アニー・ホール』(1977)の頃のウディ・アレン作品にも似ていて洒落ている。マイク・ミルズの自伝的映画なのだが、彼はもともとグラフィックデザイナーやアーティストとして活躍する人。視点や発想の面白さが、緻密に、かつソフトに映画を組み立てているところも見どころだろう。人生と日常に新鮮な息吹を感じたい人にぜひお薦めしたい。

《執筆者紹介》
中西 愛子
/Aiko Nakanishi 映画ライター
映画誌の投稿を経て、ライターに。映画誌、女性誌、情報誌を中心にレビューやインタビューを執筆中。最近の参加著書に「知っておきたい21世紀の映画監督100」「オールタイム・ベスト 映画遺産 アニメーション篇」(共に、キネマ旬報社)。

2012 02 01 [中西愛子のシネマ便] | 固定リンク

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