Dec 19, 2008
映画史上屈指の傑作がニュー・プリントで甦る。
もうこんな作品は二度と創ることが出来ない……そんなふうに思わせてくれる作品はそう多くはない。だが、ニュー・プリント版での上映が決まった『アラビアのロレンス/完全版』は、間違いなくその中に数えられる。数多くの名作を残した巨匠デヴィッド・リーン(1908年3月25日~1991年4月16日)の最高傑作であることはもちろん、今も全く色褪せることのない映画史上屈指の傑作だ。
1916年、第1次世界大戦に揺れるアラビアを舞台に、英国陸軍少尉ロレンス(ピーター・オトゥール)の人生の光と影を描き切ったこの作品。映画の底力を見せつけた壮大かつ圧倒的なその映像と物語は、D・リーン以降の映画作家たちに大なり小なり影響を与えていると言って過言ではない。旧作のフィルムでの上映が減っている中、今回のニュー・プリント版での上映は貴重な機会になる。テアトルタイムズスクエアの大スクリーンで、ぜひこの素晴らしい作品を堪能して欲しい。それはきっと、一生記憶に残る映像体験になる。
ニュー・プリント版公開にあたり配給のソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが作ったプレス資料に、「《はじめに》ニュー・プリント公開の経緯」という文章が掲載されていた。作品のことはもちろん、今回の上映について理解するのにも良いと思うので、以下に掲載しておきます。興味のある方はぜひ読んでみて下さい。
《はじめに》 ニュー・プリント公開の経緯
今回上映されるのは、1962年製作のオリジナル版ではなく、1988年製作の『アラビアのロレンス/完全版』。この完全版はL.A.の本社スタジオがアーカイブに保存していて、そのネガから起こしたプリントが今回上映されるニュー・プリントになる。1962年のオリジナル版のネガは、L.A.の本社スタジオによって1988年に以下のように復元された。
1962年に製作されたデヴィッド・リーンの『アラビアのロレンス』は、ロイヤル・プレミアの時には222分の上映時間だった。だが、1カ月後には約20分カットされ、以後も上映効率などを理由に次々と短くされていった。そうした混乱の中、1966年以降は2巻目のプリントが裏焼きになり、砂漠で時計を見るシーンで数字が反対になっているなど、とんでもないミスがそのままにされた。これを1988年、欠落部分を探し出して223分に復元し、リーン自身が最終的に216分に編集。復元作業には費用が掛かり過ぎ、その完成が危ぶまれた。だが、マーティン・スコセッシ、スティーブン・スピルバーグら、リーンとこの作品を尊敬する一流の映画人たちの働き掛けにより、「完全版」として完成、上映された。
幸いなことに、リーンと編集のアン・V・コーツが直接携わったことで、編集のミスを正し、全篇に渡って細かいシーンやショットを復元。フィルムの退化による画質の劣化も蘇った。とりわけ音響効果は飛躍的に改善され、モノラルからドルビーSR仕様にグレード・アップ。音楽ばかりではなく、大画面に展開する移動音の効果が格段に素晴らしくなった。不幸にもサウンドトラックを紛失した部分は、オリジナル・キャストが再度アフレコ。細かいセリフまで復元、声の衰えをコンピューターで補正するなど、緻密に作業が施された。映像面では、長いシーンの追加はそれほど多くなく、殆どが場面つなぎのカットやエスタブリッシング・ショットの追加となっている。1989年のナショナル・ボート・オブ・レヴュー賞で、復元の功績によってコーディネーターのロバート・A・ハリスは特別賞を受賞した。
スピルバーグ、スコセッシらの強力な後押しで復元作業が進み、1988年に「完全版」として完成したこの作品。だが、日本ではすぐに劇場公開されなかった。この傑作が大スクリーンに甦ったのはそれから6年後の1994年秋。渋谷パンテオン(現在閉館)で開催された東京国際ファンタスティック映画祭が「完全版」のニュー・プリントを取り寄せ、日本での初上映を実現した(筆者はこの上映を観ました。地震による上映中断は残念でしたが、“初めて観る”傑作にとても感動しました)。その後、1995年3月に丸の内シャンゼリゼ(現・丸の内TOEI2)ほかで公開されたが、それ以後、ニュー・プリントでの公開はされていない。1994、1995年公開のプリントは音仕様がアナログだったが、今回はデジタルとなる。
今年のOEFF(大阪ヨーロッパ映画祭)で音楽のモーリス・ジャールが名誉委員長に就任、来日が決まると、映画祭事務局から配給のソニー・ピクチャーズ エンタテインメントに上映申し込みが入った。だが、13年前に焼かれた上映用プリントはアセテート性で劣化している上に傷なども多く、とても上映には耐えない状態。そこで、L.A.本社のプリント担当者にニュー・プリントの手配を依頼すると、「この作品は上映時間が異例に長く、経費が非常に高く掛かる。本当に大丈夫か?」と何度も尋ねられ、世界的に珍しい依頼というのが明らかな反応だったという。1988年の「完全版」完成当初は世界的にもプリントで上映されていたはずだが、それから20年が経過した今、当時プリントを焼いた海外支社がそれを持っていても、日本と同じような劣化があると思われる。そうした状況での今回の上映は、世界的に見ても非常に珍しい例になるだろう。また、今後はフィルムをデジタル・データ化していくのが世界的な流れなので、プリントで観られるのは本当に貴重な機会になる。またデジタル化するにしても、非常に大切に扱われている作品なので、更に時間と手間を掛けことも予想される。ブルーレイ化について慎重で、ソニーが誇るの名作にも関わらず、そのメドは立っていないという。
15年振りに来日した巨匠モーリス・ジャールへの敬意と、OEFFの真摯な姿に感銘を受けたソニー・ピクチャーズ エンタテインメントは、L.A.の本社スタジオにニュー・プリントを正式に発注。また今年は、ソニー・ピクチャーズのコロンビア映画創設85周年/日本支社設立75周年という節目の年となるため、第15回大阪ヨーロッパ映画祭でのアニバーサリー上映の他、“テアトル東京クラシックス”を開催している興行会社、東京テアトルの賛同、協賛を得てのテアトルタイムズスクエアでのロードショーが決まった。
(文章は一部再構成、加筆、修正してあります)
『アラビアのロレンス/完全版』 “LAWRENCE OF ARABIA”
12月20日(土)~テアトルタイムズスクエアでロードショー
監督:デヴィッド・リーン
製作:サム・スピーゲル
原作:T・E・ロレンス
脚色:ロバート・ボルト
撮影:フレデリック・A・ヤング
編集:アン・V・コーツ
音楽:モーリス・ジャール
出演:ピーター・オトゥール、アレック・ギネス、
アンソニー・クイン、ジャック・ホーキンス、
オマー・シャリフ、ホセ・ファーラー、
アンソニー・クエイル、クロード・レインズ、
アーサー・ケネディ、ドナルド・ウォルフィット、他
1962‐1988年/イギリス/227min./スコープ/ドルビー(SRD:SR)
第35回(1962年)アカデミー賞7部門受賞
作品賞/監督賞/撮影賞(カラー)/作曲賞/美術監督・装置賞(カラー/音響賞/編集賞
※入場料金、タイムテーブル、休館日、その他の詳細は作品公式HP、
劇場HPをご覧下さい。
公式HP http://www.lawrenceofarabia.jp/
劇場HP http://www.cinemabox.com/schedule/times/
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント http://www.sonypictures.jp/
2008 12 19 [Pause CLASSICS] | 固定リンク | コメント (0) | トラックバック

